今年の第1四半期は、すべてのタイプの物件で堅調な動きを見せました。
とりわけ一戸建て住宅の在庫不足は顕著なものでした。今年に入ってからの3ヶ月間で、住宅ローンの金利は50%も上昇しています。特に3月にはとりわけ大きな上昇をみせました。このように金利が大幅に上昇したにもかかわらず、なぜ住宅価格は依然高騰し続けるのでしょうか?
理由の一つとして、住宅購入までにかかる時間が関係していると推察できます。
つまり、物件選びから、ローンの事前承認取得、売買契約、※エスクローを経て、成約に至るまでにはある程度の時間がかかるため、金利上昇による住宅市場への顕著な影響は、第2四半期までみられないだろうと予測できます。
金利の変動はつねに不確定で、さらには突発的な動きをすることもあるので、金利が不動産マーケットに与える影響を正確に予測することは至難の業です。
金利はあくまでも一つの要因にすぎません。例えば、地域経済の状況や金融市場、新たな富の創出、住宅の値ごろ感、消費者の経済状況に対する満足度、インフレーション、人口移動、パンデミック、賃料、債務、政府の政策などが、市場に大きな影響を及ぼす要因と考えられます。そして、それらはプラスとマイナスの両方のシグナルを点滅させます。
ローンを組んで住宅を購入する買い手にとって、金利の支払額は月々の住居費のなかで非常に大きな部分を占めます。
金利の変化の規模とスピードによって、金利の低下は、2021年に起こったように、需要過多に拍車をかけます。一方、金利の急上昇は、2018年後半に起こったように、たいてい市場を落ち着かせる効果があります。
もし金利と住宅価格の双方が急上昇すると、そこには二重苦が待ち受けていることになります。金利の動向を正確に予測することはとても難しいことです。たとえば、3カ月前にフレディー・マック(FHLMC 連邦住宅金融抵当公庫)は、2022年の30年固定金利の平均率を3.6%と予測しましたが、実際のところ、3月末には4.67%を記録しました。
私たちが“在庫不足”を話題に挙げる時、それは必ずしも物件の在庫数が単に少ないということではありません。在庫不足といわれた2021年には、新たに市場に出された物件の数が数年ぶりの高水準に達しています。
”在庫”は、その日に売りに出されている物件の数で測られるので、たとえ新規リスティングの数が一定の水準で推移していても、あるいは増加していたとしても、物件が早い速度でどんどん売れてしまえば、市場にあるリスティングの数(在庫)は少なくなり物件が不足することになります。サンフランシスコでの物件供給状況と市場の動きは、一戸建て住宅とマンションとでは大きく異なります。
このレポートは、2022年第1四半期に起こった様々な事象を鑑みて分析しています。
第2四半期は、需要がたいてい一年のうちでもっとも高まりますので、”売り”がもっとも活発になる時期です。
(資料提供・文章執筆:秦 晴子氏)
※エスクロー:取引の際に買い手と売り手との間に、信頼できる第三者に仲介させること、またはそのようなサービス。不動産取引の安全を保つためにアメリカで発達した仕組みである。
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